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DQ6メインのDQ雑多ブログ

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私の理想

2010.02.20 (Sat) Category : DQ6:ss


 テリ主。

 つまり何が燃えるかっていいますと、詰まる所テリーの羨望が好きなんです。羨望は、ハッ主には無いじゃないですか。ただいちゃいちゃ愛し合ってるじゃないですか。ハッ主は。
 それはそれで好きなんですが、私はとかく、羨望だとか、敬愛だとか、そういう、上下関係が好きなんですよ。先に進む人と、それを追う人と。手を繋いで力を合わせて進むのも大好きですが、手を伸ばすという行為が愛しいのです。
 そんなわけで、テリ主。主テリに限りなく近い、テリ主。
 身体に染み付いた習慣のせいで、テリーは早くに起きる。パーティの仲間達が未だ馬車の中で眠りに付く間も、ただ音も立てずに起き上がり、一人、そこから少し離れる。
 丁度太陽が出る時間のはずだ。真上の空を見上げれば、藍色の空を、端から白い光が切り裂いている。そこでようやく、火の番をしているはずの人間が一人居ないことに気づいた。黒く変色した木の枝に、微かに点々と残り火が輝いている。その焚き火のすぐ近くに、リーダーである男の愛剣が置かれている。伝説の剣をこうも地面に置いて、あいつは物の価値が分かっているのだろうか。それよりも、盗まれる恐れがないのだろうか。
 テリーは鞘に納まったラミアスの剣を拾い上げ、肩に担いだ。ラミアスの剣は鞘から抜けば選ばれた人間以外には扱えないほど重く鈍重な刃になるが、鞘に入っていると他の剣よりもむしろ軽く感じた。遠くの方から鳥の囀る声を聞いて、テリーは馬車から離れる。


 目当ての男はすぐ近くに居た。距離にして10m離れているかどうかというところ、切り立った崖の続く端で、地面に座り込んで朝焼けを見ていた。
 蒼色の髪の毛が風で靡く。陽光を受けて髪の毛が白く光っていた。眩しい。それが男のことなのか、朝焼けなのか、テリーは判断できない。男の剣を背負い、木々の間で立ったまま、しばらく男のその座り込んだ背中を見た。
 男はどうやら片膝を抱え込み、もう片方の足を崖にぶらりと下ろしているようだった。テリーの場所からは、男の背中と後頭部しか見えない。一体、どういう顔でこの朝日を見ているのだろう。テリーは、ぼんやり、そう思った。
 小鳥がやってきて、男の傍らに降り立った。小首を傾げながらちょこちょこと男に近寄る。手を伸ばしたら逃げられることを知っているんだろう、そいつは何もしないで、気が付かない振りをするかのように、今だ沈黙を保って真っ直ぐ向こうの山を見ていた。
 どうして声をかけないのか、と今更テリーは不思議に思った。そうだ。俺はこいつに、自分の得物を自分から離すなと、説教しにきたのだ。それなのに、どうして俺はこうやって、気配を殺してこいつを見ているんだろう。それよりも、こいつ、俺に気づいていないのだろうか。それもおかしい。こいつは確かに抜けているところがあるけれど、気配を殺した人間なんかには、すぐ気づくはずなのだ。俺程度の人間ならば。
 あえて無視しているのだろうか。意味が無い。もしかしたら、俺は試されているのだろうか? わからない。こいつがわからない。
 生まれつきの体質のせいで小柄な俺よりも、そいつは平均的な身長と肉体を手に入れて、この旅でそれを活かすまでに至っている。こいつが羨ましい。姉さんを助けたこいつ。俺を助けたこいつ。俺のできなかったこと、俺の手に入れられなかったこと、それを全てやってのけて、それを全部手に入れた。
「―――――」
 黙ってそいつを見ていると、男はようやく振り向いた。傍らの小鳥が逃げる。腰を捻ってぽかんとした顔で俺を見上げ、そいつはよう、おはよう、とのんびりと挨拶を投げてくる。
「・・・・・・・・・」
「なんだ。怒ってるのか、朝っぱらから。忙しいな、テリー」
 男は軽く、ははは、と笑った。俺と戦った時とは違う、穏やかな空気で。
「・・・なんだよ。別にからかったわけじゃない。ただ疲れないのかなー、って心配しただけだ。まぁいいや。なんで話しかけてくれないんだ?」
「気づいてなかったのか」
「いや、気づいてた。でも話しかけない上に距離をもって止まったから、もしかして稽古でもするのかな、と思って。いつ斬りかかられるかと、どきどきしてた」
 ようやく立ち上がり、男は土埃を払う。陽光を背に背負って、ふ、と柔らかく微笑む。うまく、こきゅうが、できない。
「剣」
「・・・・・・あ?」
「剣、置いてくなって怒りにきたんじゃないのか?」
 そいつは悪びれもせずにそう言う。俺はぎっ、と男を睨んで、背負っていた刃をそいつに投げる。ちゃっ、と金属のぶつかり合う音を立てながら、剣は本来の持ち主の手に還った。
「俺が持ってくるのを見越してたのか?俺をパシリにさせようとは、いい根性してるな」
「いや、違う違う。忘れたのは、ただ単純に忘れただけで、お前が持ってくるなんて思ってなかった。お前がラミアスを持ってたから、もしかしてそれを離すな、って怒りにきたのかなー、って思っただけだ。だってお前が俺を探す理由って、それぐらいしか思い浮かばないし」
「分かってるなら、まだるっこしいこと、するな」
「ごめん。悪かったよ」
 男はそう言って、剣を背負う。いつもの通り、いつものこいつだ。刃を持っていないと、本当にただの同年代ぐらいの男にしか見えない。
「先に戻る」
「おい、テリー」
「なんだ」
「挨拶」
 あ? と聞けば、そいつはいつもの困ったような笑い方をして、「おはよう、って言ったろ」と言う。俺はなぜかむかむかして、「ああ、おはよう!」と吐き捨てるように言った。悔しい。俺だけが乱されている。呼吸も、調子も、心臓さえも。
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