Please wait until thick shadows come.
DQ6メインのDQ雑多ブログ
書きたいのがどんどこ増える
2010.01.30 (Sat) | Category : DQ6:ss
予想はしてましたが複線が張り巡らされすぎてて笑う。
ハッサンの「レックって細っこい癖に山育ちだったのか」とかね。山で暮らしてないしね。
ムドーを倒した後、ライフコッドの自宅で一拍した後のターニアの会話から派生。
完璧ネタバレなので注意。
機織りの仕事を終えて外にでてみると、まだ日が落ちていなかった。柔らかい橙色の夕焼けが、とおくの山肌を温かく包んでいる。背の方から吹いてきた冷たい風と、その柔らかな日差しを浴びて、ターニアはふと、母のことを思った。自分の幼い頃にしんでしまった母。布を重ねた中に抱かれ、優しい子守唄でまどろむ。あの美しく尊い日々。
「ターニア、風邪をひくよ」
「はぁい」
機織り小屋の管理をする老婆が、扉に鍵を掛けながら言った。寒そうに肩にかけた手織りのケープを、皺がれた手で寄せる。おお、寒いねぇ、と呟きながら、普段の蒼色のワンピースを着るターニアを眩しそうに見た。
「ターニア、そういえば」
「さようなら。早く夕飯の支度しなきゃ」
老婆が声音を変えて、囁くように声を掛けると、ターニアはぱっと持ち前の明るい笑みを零しながら、その場から逃げるように去った。老婆の声から逃げるように、あっという間に坂を駆け上がっていく。
ライフコッドは夜になると人通りが消えるため、家屋の灯りだけが頼りになる。そんな暗い中を人が出歩くには危ないからと、多くの人は夕暮れには帰路に着く。ターニアのその背に声を掛けようかと躊躇いながら、老婆はそれを諦め、肩を竦めながら家路についた。
家の中に灯りがついていないから、ターニアは彼が帰っていないものだと思っていた。夕暮れといえどすでに室内の中は禄に見えないほど薄暗い。それでも人のいる気配だけはあったから、ターニアは中に入って、しばらく暗闇に目を凝らした。
「おかえり」
ぽつ、と雨が一粒落ちたかのような他愛もない声が、暗闇から零れた。ターニアは肩から力を抜いて、「ただいま」とほっとしたように答える。
目が慣れてくると、どうやら彼は部屋の中央にあるテーブルに肘をつけて、椅子に座って何か考えに耽ているようだった。彼はしっかりとした年頃の青年の癖に、何かと細かいことは自分で動かない。それはただだらしがない、とも言えたけれど、彼にはそれを補って余りあるほどの高貴さというか、当たり前の血筋の良さが伺えた。そう。王子様、なのだ。この人は。
「灯り、点けないの?」
「ああ――――ごめん、忘れてた」
うかつにも、ただぼんやりしていただけで、彼は慌てて立ち上がる。そんなところに庶民のような、自分とそう変わらない存在なのではないか、という錯覚を受けてしまう。
「早かったんだな。もう少しかかると思ってた」
「うん、今日は早く終わって。お兄ちゃんも早かったね」
「ああ、うん」
見れば、部屋の隅に彼の切ってきた薪が詰まれている。別にやって欲しいと頼んだことではないが、ここに住ませてもらう身としては、働かないと居心地が悪いと、自ら買って出てくれたのだ。ただでさえ村の人に白い目で見られているのだから、少しぐらい働かせてくれと。ターニアはそんな真摯な男に全幅の信頼を寄せていた。だからこそ留守は任せることも、もう当たり前のようになっていたし、彼もそれに応えるようにただターニアに尽くした。ターニアが「お兄ちゃん」と呼ぶことも、当たり前のように許容したし、それを鬱陶しがる風もなかった。
「いいよ。私がやる」
ターニアは手馴れた手つきでさっと室内に灯りを灯した。ランプにつけられた明かりが、段々と室内を明るく照らしていく。そこでふと、ランプの明かりにうっすらと照らされた彼の頬に、朝は見なかったはずの擦り傷ができているのに、ターニアは気づいた。
「それ、どうしたの」
「それ?・・・・あ、ああ、これか」
すっかり忘れていた、とでも言うように、彼は自分の頬を触り、「いや、全然大丈夫だよ。傷なんてない。皮がむけてるだけだ」と慌てて弁明する。灯りに照らされたターニアの怒った顔が見えたんだろう。
「ほら、触ってみてもいいよ。傷なんてない」
彼はそう言ってターニアに頬を見せ付けた。見れば、皮が痛々しくズルむけているのに、中の肉が見えているわけでも、血が見えているわけでもない。ターニアは直感で、彼が、いつものように自分に気づかれないよう、魔法、で直したのだろうと思った。実際ターニアが見たことは無かったが、彼はそんな力を持っていた。元は旅をしていたのだ。当たり前だ。
「ランドにやられたんでしょう」
「いや、違う。慣れない山道で、滑って転んだんだ。動物の糞を踏んじゃってさ、あ、服は汚してないし、靴もちゃんと、入る前に洗ったよ」
「見てたんだから」
「・・・・あ、・・・ええと」
実際は見ていないけれど、そうターニアが言えば、途端、彼は言葉を無くしてどもった。強い光をたまにみせる目は、ターニアからそらされている。
「ほら。嘘。どうしたの、突き飛ばされたの?どうしてランド、貴方に酷いことするのかしら」
「・・・・・・・・ランドは君のことが大切なんだよ。僕が君に酷いことすると思っているんだ。まして、好きな子の同じ屋根の下に、突然やってきた素性も分からない男を住まわせるなんて、普通許せないよ」
「そんな!・・・・・ランドがそんなことは、無いわ。どっちにしろ、暴力を振う人は、嫌い」
彼はふっと微笑むように、自嘲するように笑みを零した。
「僕の方が乱暴者だよ。今までどれほどの魔物を倒して、人を傷つけてきたか、分かったものじゃない」
「貴方の場合は守れなかっただけでしょ!貴方が傷つけたわけじゃ、」
そこまで言って、ターニアははっと口を手で覆った。すぐ、ごめんなさい、と泣き出しそうな声を上げる。健気な優しい妹の姿を見つめ、彼は「ありがとう」と言った。
「ごめんなさい、こんなこと、言いたかったんじゃなくて」
「分かってるよ。ターニア、君は何も悪いことなんてしてないじゃないか。泣くのはやめてくれ」
ただ貴方は頑張っているだけなのに、とターニアは心の中でひたすら泣いた。私が彼の本当の妹だったら、もっと彼の気持ちが分かってやれたのに。そう自分を詰った。涙で濡れた視界の端で、ためらいがちに伸ばされた彼の手が、そっとターニアの頭を撫でた。怯えるような、申し訳無さそうな、そんな酷く優しい手つきで、ターニアは母の手つきを思い出して、また酷く泣いた。
「夢の中の私はおにいちゃんと兄妹じゃなくて、おにいちゃんはどこかの国の王子様なの」
ターニアは良い子だよなぁ~。可愛いよなぁ~。
でもハッサン・ミレーユ・バーバラを連れて行ったとき、何故かバーバラだけ挨拶しなかった・・・バグ?
でもターニアvsバーバラ→6主とか大好物です。
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