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DQ6メインのDQ雑多ブログ

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本命

2010.02.10 (Wed) Category : DQ6:ss


 クリア後の世界ネタバレ注意

 5勇者×6主 息子はビアンカの息子ってことで。

「レック兄ちゃん、朝だよ」
「・・・・・・・おお」
 ベッドの上に馬乗りになって、レックスは青年の顔を覗き込んでいた。こんな姿、この宿を切り盛りすることになっているビアンカに見られたが最後、レックスは吊るし上げにされるだろう。王子さまが何だ。彼女は女王様なのだ。
 レックは腹の上にレックスを乗せたまま上半身を起こし、のろのろとベッドの上に胡坐をかいた。
「うー、ねむ・・・」
 ぐいーっと身体を捻り、レックは自分の目をぐしぐしと擦る。レックスが既に用意した洗面器を差し出せば、うー、ともう一度唸って顔を洗った。ビアンカの用意したタオルで顔を拭き、ふぁーと一度大きく欠伸をする。脱いでおいた橙色の布を一度身体に巻きつけるように袈裟懸けにして、青い上着に袖を通す。それを一緒にベルトで止めて、剣を持ったときに手の皮が擦りむけないように包帯をぐるぐると巻く。と、そこまでの準備をしてから、まだレックスが自分のベッドの上に座り込んで自分をじっと見ていることに気づいた。
「どうかしたか、レックス」
「んー・・・」
 聞けば、少年はちらちらと余所見とレックを見ることに忙しく目を動かし、ゆらゆらと左右に揺れた。落ち着きの無い具合は子供のそれなのだが、レックはこの子供がただの子供ではないことを承知していた。王子様で勇者様だ。レックだって同じなのだが、レックは自力でこの勇者という力を手に入れ、レックスは生まれた時から勇者だった。選ばれた存在なのだ。ただレックはその素質があっただけで、選択したのはレック本人だ。その差は大きい。レックは哀れみとは言わないが、この小さな身体に一体どれ程の覚悟を背負おうとしているのだろう、とレックスを見るたびに考える。
「言ってくれないと分かんないぞ」
「レック兄ちゃん、次いつ来る?」
 レックスの声はどこでどう聞いても寂しがる子供の声だった。レックはきょとん、とした顔でじぃっとこちらを見てくるレックスを見返して、くっ、と喉で笑った。
「なっ、なんだよ、笑わなくてもいいだろー!」
「いやぁ、レックスに好かれて嬉しいんだよ」
「ぐ・・・」
 レックがそう言うと、レックスは何故か顔を真っ赤にして言いよどむ。もごもごと口の中だけで何かを言って、うーうーと唸るだけだ。
「奥にいる魔物を倒せるぐらいになるまでは、多分通う嵌めになりそうだな、とは思うな。まだ・・・俺は力が足りない」
「兄ちゃんでも、まだ足りないの?・・・お父さんより強いのに」
 レックスの声は本当に驚いた風だった。レックスは本能で、レックの強さを察知している。レックの強さはレックスには到底届かないもので、それは勇者としても含め、レックスは本当にレックを尊敬しているのだ。そんな子供の反応に、レックは素直に頷く。
「ああ。むしろ、十分な強さなんて無いと思うけどな。まだまだ、俺は強くなれるさ」
「そんなに強くなってどうするの?レック兄ちゃんはさ・・・・・あのさ、たまに、自分の持つ強さって、怖くなったりしない?」
「・・・・・・・・・」
 レックは俯いた子供の頭を見下ろして、ふぅん、と内心納得の声を上げた。この子供が恐れているのはそれか、いや、他にあるのだろう。ただ、これはほんの少しの断片。この子供の怖いものの、一つに過ぎない。
 じっとするレックスの頭をわしわしと力強く撫でくりまわし、「レックスはいい奴だなぁ」とレックは呵呵大笑した。
「ぶ、わ、あ、なん、なんだよう!」
「俺、あまり頭良くないんだ」
 それがどうしたというのだろう、とレックはレックスの掌から逃げて、ぐしゃぐしゃになった頭を適当に直した。寝癖がついてても特に気にしたりはしないのだが、それをビアンカに見つかると櫛で撫で付けられるのだ。ぺたっとした髪だとお坊ちゃんみたいで嫌だ。レックを見上げると彼は眼を細めて眩しそうに自分を見ていた。その鼈甲のような柔らかな色の目に見蕩れる。
「今まで色々できないことがあったんだけど、強くなればその何十分の1ぐらいは、できるようになると思わないか?できないことをそのままにしてぼけーっと見てるのだけは嫌なんだよ。ただこれは俺の悪あがきなんだ。でもその悪あがきが、到底手の届かない場所にいる奴に、ほんの少しだけでも一泡ふかせられたら、頑張ってよかった!って思うし、やったかいがあるだろ?」
「・・・手の届かない場所にいる奴って、誰?」
「え、あ、うーん、・・・・・・・そうだな。神さまとか?」
 唐突に出てきた、まぁ確かに手の届かない存在の名前にぎょっとしながら、レックスは敬愛する男の顔を見る。別にそんな人だと思ったことは無かったけれど、もしかして神さま嫌いなんだろうか、と思う。
「レック兄ちゃん、神さま嫌いなの?」
「まさか。俺は俺なりに神さまは尊敬してるぞ。こんな世界作ってこんな運命考えるぐらい頑張るなんて、並大抵のことじゃないしな。だから俺は、そんな神さまの努力に報いるために、こんな頑張ってるんだよ」
「・・・ふぅん」
 頭悪いとか言ってるから確かにどうしようもないことを言っているのは分かるけれど、レックスは彼が言うように彼がただの馬鹿とは思えなかった。
 いつの間にか準備を終えて立ち上がるレックの背をぼーっと見送りながら、レックスは無意識に大声を上げていた。
「次!次にレック兄ちゃんが来るまでに、僕、もうちょっと強くなってる!だから、今度手合わせしよう!」
「ん、いいぞ。じゃ、俺も次までにはまた強くなってるからな!負けないぜ」
 レックはそう快活に言うと、部屋から出て行った。ビアンカと話す声が聴こえてきて、ばたん、と扉の閉まる音がする。入れ違いにタバサとゲレゲレが部屋にやってきた。ベッドメイキングをしに来たのだろう。
 双子の兄の顔を見て、タバサは不思議そうに首を傾げた。
「お兄ちゃん、誕生日とクリスマスがいっぺんに来たみたいな顔してるよ?」


 これまた中途半端な・・・。次は手合わせする話になる。と思われる。
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