Please wait until thick shadows come.
DQ6メインのDQ雑多ブログ
記念
2009.12.14 (Mon) | Category : DQ6:ss
BLサーチさまに登録させていただいたんで記念にBLっぽいテリ主を書こうと奮闘してみる。
どうでもいい会話
「好きな話は蟻とキリギリス!将来の夢は蟻になることです」
「無我の境地って奴か!」
「家の中でぬくぬくとしながら外で凍え死にそうになるキリギリスを鼻で笑うんだな」
「レックはもうちょっと思いつきで喋らないようにしなさい。そしてテリー、いますぐチャモロに謝りなさい」
蟻好きのチャモロはたいそう可愛いと思った今日この頃。テリーが迷走している。
どうでもいい会話
「好きな話は蟻とキリギリス!将来の夢は蟻になることです」
「無我の境地って奴か!」
「家の中でぬくぬくとしながら外で凍え死にそうになるキリギリスを鼻で笑うんだな」
「レックはもうちょっと思いつきで喋らないようにしなさい。そしてテリー、いますぐチャモロに謝りなさい」
蟻好きのチャモロはたいそう可愛いと思った今日この頃。テリーが迷走している。
いくら世界を救った英雄を王子として抱いている大国でも、兵士にボンクラがいるのはどうしようもない。そもそもその英雄が魔物の頂点を倒したので今まで緊張をもって見張りをしていた兵士もたるみ始めているのだ。
今まで魔物の巣窟に一人で乗り込んだりなどを繰り返してきたテリーにとって、そんな一般兵のやる気の無い見張りを突破するなど鼻歌交じりでできるほどだったし、その英雄さまと共に死地を乗り越えた戦士である彼が今や突破できない城などありはしないと言っても過言ではなかった。
「よお」
「よう」
だからこそ、テリーが喋々喃々と真夜中にレックの私室へと踏み込んできたときも、レックは特に驚きの声をあげることもなかった。来るということを知っているわけではなかったが、ふと、ほんのちょっとした気まぐれで、レックはその日はベッドに腰掛けたまま起きていた。連日王政について学ぶことを強いられ、疲れていないわけではなかったが、今まで野宿を繰り返しながら生死をかけた戦いを繰り返してきたことに比べれば、欠伸がでるような毎日であるが故に、稀にこうやって目が冴える日があった。テリーが城の番兵の目を盗んでやってきたのには驚かなかったが、丁度起きていたころにやってきたのには、少なからず驚いた。
「近くに来てたのか」
「ああ。ついでに、平和ボケしたお前の顔でも拝んでおこうと思ってな」
「そう言われたら、言い返せないな」
どうせだから何か飲むか?と手で扉を指せば、テリーは無言でそれを断った。腰に下げていた雷鳴の剣を壁に立てかけ、レックの座る正面にあった椅子に腰掛ける。ふと黒檀の机の上にある分厚い歴史書が目に留まり、了承も得ずに勝手にそれを開く。レイドックの歴代の王について記されたその古びた本に無造作に目を走らせ、テリーははっ、と一度冷笑すると、それを机の上にどさりと投げ捨てる。
「暇そうだな」
「暇じゃないよ。それなりに忙しい。覚えることもいっぱいあるし、やらなきゃいけないことも結構ある。たまに旅の頃のことが懐かしくもなるんだ」
「ふん、世界なんて救わない方が良かったとか思ってるのか?」
嘲笑うような声音で囁くテリーの言葉に肩を竦め、レックは乾いた笑みを零した。
「そりゃないよ。・・・この国に・・・・・・やって、きて、幸せに暮らしている人達を見てると、嬉しい」
いい澱み、小さく、搾り出すような声を上げるレックをじろじろと見ながら、テリーはそれでも踏み込む。
「この国に、帰ってきて、じゃないのか?王子さま」
レックは少しだけテリーを見ると、くっ、と声を押し殺して一度笑った。困ったように眉根を寄せて、かつての仲間を心配そうに見上げた。
「テリー、お前、性格歪んだか?」
「お前が平和ボケしただけだ」
「嘘だ。お前、絶対卑屈になった。・・・どうせミレーユにしばらく会ってないんだろ。帰ってやれよ」
「あそこは俺の家じゃない」
「ほら。そういうのなんだよ。俺も」
「あ?」
テリーが不機嫌そうな声を上げれば、レックは小さく笑い返すだけだった。少し考えて、テリーは、ああ、と納得したような声を上げる。
大切な人はいる。住み慣れた匂いがする。それでも違う。何かがずれている。
テリーにとっての家は、幼い頃姉と住んでいた家。だがその姉は今はグランマーズの元にいて、そして一緒に住もうと言った。
レックにとっての家は、ターニアと共に暮らしていたかりそめの、夢のライフコッド。その妹は血の繋がらない存在に変化して、同じライフコッドで生活している。しかし、父と母はここにいる。ここがお前の家だと言う。
「そこにいれば幸せだって分かってるのに、どうして、辛いんだろうな」
問われた言葉にテリーは詰まった。机の上にある分厚い歴史書を一度睨み、とんでもない馬鹿だなお前は、と苦々しげに吐き捨てた。
「・・・・お前がいいというなら」
数秒間を取って、テリーは言った。レックの方を見ないまま。
「ここからお前を攫ってやろうか」
きょとん、と目を丸くして、レックはテリーの顔を見た。テリーはレックを見ない。紫色の淡い色をした眼球は、外を見ていた。言葉の意味を反駁して、レックはようやく、噴出すように笑った。
「いや、いいよ。遠慮しとく」
「・・・そうか」
「でも嬉しいよ。ありがとう。でも俺も、もう逃げないって決めたからさ」
「・・・そうだな。そうだったな」
何を言ってるんだ俺は、と一度呟いて、テリーはすっと立ち上がり、壁に立てかけていた雷鳴の剣を再びベルトに差した。さっさと身支度を済まして再びバルコニーから出て行こうとするテリーの背中をぽかんと見て、ん?とようやくレックは声を上げる。
「おいおい、もう帰るのか」
「ああ」
「泊まっていったらどうだ?いますぐにでも部屋用意できるぜ」
ふっ、と一度笑って、テリーはくるりと振り向いた。旅が終わってから数ヶ月しか経っていないが、テリーの背は随分と伸びた。同時にレックの背も伸びたので、まだ追い越されてはいないが、それなりに近づいたと言ってもいいだろう。
「今度はもっと気の効いた口説き文句を考えてからくる」
「は?」
「お前をここから、自分の口で俺に連れてってほしいって言わせるぐらいのな」
ぽかんとレックが見る中で、テリーは一度ニヒルに笑うと、さっと身を翻して外へと躍り出て行ってしまった。開いた扉の向こうから冷たい風が吹き込んでくるのをぼんやり見て、レックはんん?と不思議そうな声をあげ、バルコニーに出た。既にテリーの姿は無く、遠くにある庭園の見張り兵が、舟をこいでいるのを見つけた。月の無い日のことだった。
今まで魔物の巣窟に一人で乗り込んだりなどを繰り返してきたテリーにとって、そんな一般兵のやる気の無い見張りを突破するなど鼻歌交じりでできるほどだったし、その英雄さまと共に死地を乗り越えた戦士である彼が今や突破できない城などありはしないと言っても過言ではなかった。
「よお」
「よう」
だからこそ、テリーが喋々喃々と真夜中にレックの私室へと踏み込んできたときも、レックは特に驚きの声をあげることもなかった。来るということを知っているわけではなかったが、ふと、ほんのちょっとした気まぐれで、レックはその日はベッドに腰掛けたまま起きていた。連日王政について学ぶことを強いられ、疲れていないわけではなかったが、今まで野宿を繰り返しながら生死をかけた戦いを繰り返してきたことに比べれば、欠伸がでるような毎日であるが故に、稀にこうやって目が冴える日があった。テリーが城の番兵の目を盗んでやってきたのには驚かなかったが、丁度起きていたころにやってきたのには、少なからず驚いた。
「近くに来てたのか」
「ああ。ついでに、平和ボケしたお前の顔でも拝んでおこうと思ってな」
「そう言われたら、言い返せないな」
どうせだから何か飲むか?と手で扉を指せば、テリーは無言でそれを断った。腰に下げていた雷鳴の剣を壁に立てかけ、レックの座る正面にあった椅子に腰掛ける。ふと黒檀の机の上にある分厚い歴史書が目に留まり、了承も得ずに勝手にそれを開く。レイドックの歴代の王について記されたその古びた本に無造作に目を走らせ、テリーははっ、と一度冷笑すると、それを机の上にどさりと投げ捨てる。
「暇そうだな」
「暇じゃないよ。それなりに忙しい。覚えることもいっぱいあるし、やらなきゃいけないことも結構ある。たまに旅の頃のことが懐かしくもなるんだ」
「ふん、世界なんて救わない方が良かったとか思ってるのか?」
嘲笑うような声音で囁くテリーの言葉に肩を竦め、レックは乾いた笑みを零した。
「そりゃないよ。・・・この国に・・・・・・やって、きて、幸せに暮らしている人達を見てると、嬉しい」
いい澱み、小さく、搾り出すような声を上げるレックをじろじろと見ながら、テリーはそれでも踏み込む。
「この国に、帰ってきて、じゃないのか?王子さま」
レックは少しだけテリーを見ると、くっ、と声を押し殺して一度笑った。困ったように眉根を寄せて、かつての仲間を心配そうに見上げた。
「テリー、お前、性格歪んだか?」
「お前が平和ボケしただけだ」
「嘘だ。お前、絶対卑屈になった。・・・どうせミレーユにしばらく会ってないんだろ。帰ってやれよ」
「あそこは俺の家じゃない」
「ほら。そういうのなんだよ。俺も」
「あ?」
テリーが不機嫌そうな声を上げれば、レックは小さく笑い返すだけだった。少し考えて、テリーは、ああ、と納得したような声を上げる。
大切な人はいる。住み慣れた匂いがする。それでも違う。何かがずれている。
テリーにとっての家は、幼い頃姉と住んでいた家。だがその姉は今はグランマーズの元にいて、そして一緒に住もうと言った。
レックにとっての家は、ターニアと共に暮らしていたかりそめの、夢のライフコッド。その妹は血の繋がらない存在に変化して、同じライフコッドで生活している。しかし、父と母はここにいる。ここがお前の家だと言う。
「そこにいれば幸せだって分かってるのに、どうして、辛いんだろうな」
問われた言葉にテリーは詰まった。机の上にある分厚い歴史書を一度睨み、とんでもない馬鹿だなお前は、と苦々しげに吐き捨てた。
「・・・・お前がいいというなら」
数秒間を取って、テリーは言った。レックの方を見ないまま。
「ここからお前を攫ってやろうか」
きょとん、と目を丸くして、レックはテリーの顔を見た。テリーはレックを見ない。紫色の淡い色をした眼球は、外を見ていた。言葉の意味を反駁して、レックはようやく、噴出すように笑った。
「いや、いいよ。遠慮しとく」
「・・・そうか」
「でも嬉しいよ。ありがとう。でも俺も、もう逃げないって決めたからさ」
「・・・そうだな。そうだったな」
何を言ってるんだ俺は、と一度呟いて、テリーはすっと立ち上がり、壁に立てかけていた雷鳴の剣を再びベルトに差した。さっさと身支度を済まして再びバルコニーから出て行こうとするテリーの背中をぽかんと見て、ん?とようやくレックは声を上げる。
「おいおい、もう帰るのか」
「ああ」
「泊まっていったらどうだ?いますぐにでも部屋用意できるぜ」
ふっ、と一度笑って、テリーはくるりと振り向いた。旅が終わってから数ヶ月しか経っていないが、テリーの背は随分と伸びた。同時にレックの背も伸びたので、まだ追い越されてはいないが、それなりに近づいたと言ってもいいだろう。
「今度はもっと気の効いた口説き文句を考えてからくる」
「は?」
「お前をここから、自分の口で俺に連れてってほしいって言わせるぐらいのな」
ぽかんとレックが見る中で、テリーは一度ニヒルに笑うと、さっと身を翻して外へと躍り出て行ってしまった。開いた扉の向こうから冷たい風が吹き込んでくるのをぼんやり見て、レックはんん?と不思議そうな声をあげ、バルコニーに出た。既にテリーの姿は無く、遠くにある庭園の見張り兵が、舟をこいでいるのを見つけた。月の無い日のことだった。
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